今回は、経理部員から質問される、
有価証券の評価と減損の会計処理について解説します。
有価証券の評価の方法と、
減損処理について教えてください
ここでは、
● 有価証券とはなにか?
● 有価証券の評価方法
● 有価証券の減損の処理方法
について解説します。
経理歴20年以上、現在東証一部上場企業の経理課長が、
間違いやすい、経理実務の事例を解説していきます。
有価証券とは?
有価証券とは、会社が発行する
● 株式や社債、
● 国が発行する国債
● 地方自治体が発行する地方債
などをいいます。
有価証券の区分と内容
①売買目的有価証券
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。
これは、一般の会社では短期的なトレーディングでの株式売買をしないので保有していません。
②満期保有目的債券
企業が、満期まで所有する意図をもって、保有する社債その他の債券をいいます。
③子会社株式及び関連会社株式
実質的な「支配力」や「影響力」の判定により決定された、子会社及び関連会社の株式をいいます。
④上記の①~③に当てはまらない有価証券
これらを合わせて、「その他有価証券」といいます。
その他有価証券は、営業取引関係、金融取引関係を強化することを目的として保有する場合があります。
有価証券の評価方法
有価証券の区分ごとに、評価方法を解説します。
①売買目的有価証券
時価で評価し、簿価との差額を損益処理します。
②満期保有目的債券
償却原価法に基づいて計算された価額で、貸借対照表に計上されます。
原則として期末で時価評価はされません。
③子会社株式及び関連会社株式
取得原価で貸借対照表に計上されます。
期末では時価評価されません。
④その他有価証券
期末に時価で評価します。
評価損益は、評価差額として貸借対照表の純資産の部に計上します。
有価証券の減損の処理方法
有価証券の減損の処理とは、
時価が著しく下落したときは,回復する見込みがあると認められる場合を除き,時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理することです。
減損は、
● 時価がある有価証券
● 時価がない有価証券
それぞれで、処理の仕方が異なります。
時価がある有価証券の減損処理
時価がある有価証券は、時価が「著しく下落」したとき減損します。
主に、上場企業の株式などがこれに該当します。
① 取得価額と時価を比較して、時価が50%以上下落した場合
時価が回復する可能性がなければ、減損します。
※時価が回復する可能性があることを証明することは、非常に困難です。
実務では、基本的に時価が50%以上下落した時点で減損せざるを得ない状況となります。
② 取得価額と時価を比較して、時価が30%~50%下落した場合
自社で、「時価が30%以上下落した場合、減損を検討する」といった独自の基準が設けられている場合、その基準に従って減損します。
自社で、より保守的に減損基準を設定する場合は、それに従って処理することも可能となっています。
参考:時価が回復する可能性があると認められる場合
以下の内容に該当する場合、時価が回復する可能性があると認められます。
● 時価の下落が一時的
● おおよそ1年以内には、時価が取得価額まで回復する見込み
将来を予測することは困難です。これを証明することは非常に難しいため、実務上は時価が回復する可能性があると認められることは、稀だと思われます。
時価がない有価証券の減損処理
これは、主に非上場会社の株式などが該当します。
株式の発行会社の、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したとき、
減損することになります。
具体的には、以下の流れで減損を処理します。
① 株式の実質価額を計算
実質価額 = 株式の発行会社の1株当たりの純資産額 × 持株数
② 所有株式の簿価と実質価額を比較
実質価額が、所有株式簿価の50%程度以上下落
③ 実質価額が、将来回復する可能性がない
④ 減損額 = 簿価 ー 実質価額
このような流れで、減損をします。
参考:時価が回復する可能性があると認められる場合
実務上は、③の実質価額が、
将来回復する可能性があると証明することは非常に難しいです。
証明するには、投資先の事業計画を入手し、
● 事業計画が実行性あるもの
● 5年以内に、財政状態の悪化から回復する可能性が高い
といった内容を証明できれば、回復する可能性があると認められます。
しかし、この内容を証明するには非常に難しく、
実務上は、実質価額が所有株式簿価の50%程度以上下落した時点で、減損してしまうことが多いです。
まとめ
今回は、
● 有価証券とはなにか?
● 有価証券の評価方法
● 有価証券の減損の処理方法
について簡単に解説しました。
有価証券の評価と減損の判定は、決算毎に処理するものです。
決算前に、事前にこの内容を理解しておく必要があります。
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