会計の用語である「引当金」という言葉は、さまざまな場面で耳にしますが、いまいち分からない言葉です。
経理担当者でも、意外と引当金の内容を理解していないことが多いです。
そこで今回は、引当金についてわかりやすく解説していきます。
具体例を使って、経理初心者でも理解できるように解説していますので、ぜひチェックしてください!
引当金とは?
引当金とは、
「将来の費用または損失の発生に備えて、事前に準備する経理処理」
のことをいいます。
会計的に、「費用または損失の発生に備えて、事前に準備しておく」とは、
今現在、費用や損失が発生していなくても、前もって費用や損失を計上しておくということです。
そして、前もって費用や損失を計上しておくためには、一定の条件があります。
(会計ルールがあります)
① 将来に発生が見込まれる損失または費用であること
② 損失または費用の発生原因が事前にわかっていること
③ 損失または費用の発生する確率が高いこと
④ 損失または費用のおおよその金額が計算できること
この4つの条件を満たすと、費用や損失を前もって計上しなければならない、
と「引当金の会計ルール」で決まっています。
具体例を用いて引当金を説明
毎年支払われる冬のボーナスで、引当金を説明します。
大抵の会社では、冬のボーナスは「4月から9月に働いた結果」に対して、12月にまとめて支払われます。
(10~11月頃に、4~9月までの働いた成果を査定され、その結果を踏まえて、12月にボーナスが支払われますね)
このボーナスですが、一般的にはこんな感じです。
●12月に支払われる予定です。
●ボーナスは、4~9月に働いた結果、支払われるものです。
●会社の業績が相当悪化しない限り、従業員に支払われることが確実です。
●ボーナスの金額は、会社の業績に合わせて、おおよその金額を決めることができます。
(今年は業績良かったから、これくらいボーナスだそう!と社長や役員が事前に決めます)
これを会計の引当金ルールに当てはめると、
●12月に支払われる予定です。
⇒ボーナスは、将来に発生が見込まれます。
●ボーナスは、4~9月に働いた結果、支払われるものです。
⇒ボーナスが発生する原因は、4~9月に働いた結果で、事前にわかっていることです。
●会社の業績が相当悪化しない限り、従業員に支払われることが確実です。
⇒ボーナスの支払いは、発生する確率が高いです。
●ボーナスの金額は、会社の業績に合わせて、おおよその金額を決めることができます。
⇒ボーナスのおおよその金額が計算できます。
このように、ボーナスの支払いは、「引当金の会計ルール」に当てはめることができます。
「引当金の会計ルール」に当てはめることができる場合は、前もって引当金を計上しなければなりません。
今回のボーナスは、一般的に「賞与引当金」と呼ばれ、12月に支払うボーナスを、事前に4~9月に引当金として計上しておきます。
冬のボーナスを事例に、具体的に引当金ついて解説しました
引当金の会計ルールとは
ここからは、ちょっと専門的な会計のお話となります。
引当金の会計ルールとは、「企業会計原則注解18」で定められています。
ルールでは、
●将来の特定の費用又は損失であること
●その発生が当期以前の事象に起因すること
●発生の可能性が高いこと
●金額が合理的に見積り可能なこと
これらの要件に当てはまる場合は、引当金を計上するということになっています。
とりあえずは、
「企業会計原則注解18」という会計ルールで、引当金の計上要件が定められている
という理解ができればいいですね。
引当金には2つの種類がある
引当金の会計ルールでは、引当金は種類が2つに分けられています。
●評価性引当金
●負債性引当金
同じ引当金でも、性質が異なる2つの引当金があります。
評価性引当金とは?
評価性引当金とは、今持っている資産の価値が、将来下がる可能性がある場合に、計上する引当金のことをいいます。
●貸倒引当金
がこれに該当します。
具体的に説明してみます。
●商品を売って、将来お金を回収する場合、将来回収するお金を売掛金として計上します。
●この売掛金、もしかしたら商品を売った相手の業績が悪化して、お金を支払ってこないかもしれません。
●相手がお金を支払ってこない可能性が高まれば、その売掛金の価値は下がる可能性がありますね。
●この時、売掛金の価値がどれだけ下がりそうか計算して、前もって引当金を計上しておくことになります。
これが、評価性引当金といいます。
上記の説明では、
売掛金の価値下落に対して引当金計上する = 貸倒引当金を計上する
ということになっています。
評価性引当金=貸倒引当金
と覚えましょう
負債性引当金とは?
負債性引当金とは、将来、お金の支出が見込まれる場合(将来費用が計上される見込みがある場合)、計上する引当金とのことをいいます。
正に上段で説明した、
●ボーナス(賞与引当金)
などがこれに該当します。
●お金の支払いが、ほぼ確実に予定されている。
●おおよそ支払予定金額を見積できますが、まだ確定してない。
このように、支払額が確定していないとはいえ、その支出は確定的なものであることから、負債として引当金に計上する。
これを、負債性引当金といいます。
ちなみに、支払額が確定してしまえば、負債の「未払金や未払費用」に計上することになります。
当金の会計ルールでは、引当金は「2つの種類がある」ことを覚えましょう。
まとめ
今回は、引当金ついて具体例を用いて、わかりやすく解説しました。
引当金を理解するには、以下の内容を抑えておく必要があります。
●将来の費用または損失の発生に備えて、事前に準備しておくもの
●会計ルールで引当金を計上する条件がある
①将来の特定の費用又は損失であること
②その発生が当期以前の事象に起因すること
③発生の可能性が高いこと
④金額が合理的に見積り可能なこと
●引当金には2つの種類がある
・評価性引当金
・負債性引当金
実際に経理実務において、引当金を計上すべきかどうか悩む場面、けっこうあります。
場合によっては、
「決算作業のあとに、監査法人から引当計上が必要!」
と指摘される、といったことも実務ではよくあるので、この書籍を準備しておいて、引当金の実務についてもしっかり把握しておいた方がいいですね。
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