
社会保険の経理処理、内容はよくわからないけど、とりあえず言われたとおりに経理処理してます…

経理でも社会保険をちゃんと理解しておかないといけないよね…
経理担当者で社会保険を理解していない人、意外と多いです。
しかし、経理では日常業務、決算業務や予算策定において、必ず社会保険に関する処理が発生します。
例えば、以下のような社会保険に関する経理処理があります。
●毎月の給与支給時に天引きする、社会保険料の仕訳起票
●未払の社会保険料を、決算において仕訳起票
●労働保険料の、毎月の費用計上
●来期予算・計画策定時、社会保険料の計画値を算出
このような処理を行う場合、社会保険の知識がないと、正しく経理処理ができているかわかりません。
そして、内容を理解していないことで、ミスする可能性も高くなります。

社会保険を理解していないと、経理の業務に支障をきたします!
そこで今回は、経理に関わる方や事務職の初心者向けに、最低限知ってほしい社会保険の基礎知識を解説します。
社会保険について、
・今までなんとなく理解していたつもりの人
・内容を理解せずに、とりあえず経理処理していた人
こんな人は、ぜひチェックして社会保険の基礎を理解しましょう。
社会保険の定義

社会保険とは、
●健康保険
●介護保険(40歳以上の人が加入)
●厚生年金保険
●雇用保険(労働保険)
●労災保険(労働保険)
※労働保険の申告・納付と合わせて行う「一般拠出金」は、ここでは省略しています。
この5つを総称したものをいいます。
経理マンは、まず最初に社会保険は5つの種類があることを理解する必要があります。
要注意!
「雇用保険、労災保険、労働保険」を混同している人、多いです。
労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」を合わせて総称したものです。
まずは、名称の定義をしっかり覚えてください。
ここからは、各保険の内容について簡単に説明します。
健康保険・介護保険の基礎知識
健康保険とは、
病気やけが、またはそれによる休業、出産や死亡といった場合に備える医療保険で、基本は国民全員が加入します。
(病気や怪我に備えた保険です)
介護保険とは、
介護が必要な人に、介護の費用を一部を給付する制度で、40歳以上の人が加入します。
(介護が必要になった時に備える保険です)
健康保険・介護保険の対象者は、基本、従業員全員です。
なお、労働条件が一定の基準を満たさない場合は、対象外となる場合があります。
健康保険・介護保険の保険料について

健康保険、介護保険について、最低限知っておきたいポイントを解説します。
●保険料は、基本、会社と従業員が折半します。
●保険料は、従業員の給与、賞与から控除します。
⇒従業員が負担しなければならない保険料は、会社が給与から天引きします。
●従業員から預かった保険料と、会社が負担する保険料をまとめて、毎月健保組合などに納付します。
⇒納付は、対象月の翌月末日までに行います。
⇒例えば、4月分の保険料は、5月末までに納付することになります。
●保険料は、原則、年1回変わります。
⇒4~6月の報酬(給与)の支払額の平均値で、1年間の保険料が決まります。
⇒9月分の保険料から、変更します。
(給与の締日にもよりますが、9月または10月給与から変更されます)
●基本給等が変更となった場合は、改めて保険料が変更されます。
⇒基本給等が変更された場合、その変更月から、3か月分の報酬(給与)の平均値で、保険料が決まります。
●保険料は、以下の表で毎年決められています。
⇒毎月の報酬(給与)によって、段階的に保険料が決められています。また、賞与に対しても保険料がかかります。
※健康保険、厚生年金の保険料一覧表

厚生年金保険の基礎知識
厚生年金保険とは、
国民年金に上乗せされて給付される年金です。
ちなみに国民年金は、20歳以上60歳未満の国民全員が、必ず加入することになっている年金です。
(老後に備える年金です)
対象者は、基本、従業員全員です。
なお、労働条件が一定の基準を満たさない場合は、対象外となる場合があります。
厚生年金保険の保険料について
基本、健康保険・介護保険と同じと覚えて問題ありません。
(一部計算の違いはありますが、とりあえず計算方法は、健康保険・介護保険とほぼ同じと覚えてください。)
※保険料についての詳細は、「健康保険・介護保険の保険料について」を参照ください。
雇用保険の基礎知識
雇用保険とは、
労働者が失業をした場合などに、必要な給付(失業手当など)を行うための保険です。
(失業した時の保険です)
一般的には、「失業保険」と呼ばれることが多いです。
対象者は、基本、従業員全員ですが、以下の条件があります。
①31日以上雇用される予定である人
②1週間の労働時間が20時間以上の人

雇用保険は、失業保険(手当)といった方がわかりやすいですね
なお、この雇用保険は労災保険と合わせて、「労働保険」と言われます。
雇用保険料について
ここでは、雇用保険料について、最低限知っておきたいポイントを解説します。
●保険料は、基本、会社と従業員が負担します(負担割合は異なり、会社負担が大きい)
●保険料は、従業員の毎月給与や賞与から控除します。
⇒従業員が負担しなければならない保険料は、会社が給与から天引きします。
●年に1度、雇用保険料の概算額を算定し、会社がまとめて前払いします。
⇒年3回に分けて納付することも選択できます。
●年に1度、雇用保険料の確定額を算定し、前払いした概算額との差額を精算します。
●上記概算額の算定と前払い、確定額の算定と精算は、毎年6月に行うのが基本です。

経理では、この概算と精算の処理があることを理解していないと、処理ミスする場合があります
●保険料は、後述する「労災保険」と一緒に支払します。
●概算額の算定と確定額の精算は、以下の申告書で計算します。


できれば、この申告書の内容を理解したうえで、経理処理するのが理想です。
必要あれば、労働保険申告書を作成する担当者に、どうやって申告書が作成されているか確認してみましょう!
労災保険の基礎知識
労災保険とは、
業務や通勤によるケガや死亡などに対し、労働者や遺族に保険を給付する制度です。
対象者は、基本すべての従業員です。
(業務中の怪我などに備える保険です)

一般的には、仕事中に事故があったとき「労災!」と言われるものですね
なお、この労災保険は雇用保険と合わせて、「労働保険」と言われます。
労災保険料について
●労災保険料は、全額会社が負担します。
●労災保険料は、毎月の給与や賞与から控除されません。
●年に1度、労災保険料の概算額を算定し、会社がまとめて前払いします。
⇒年3回に分けて納付することも選択できます。
●年に1度、労災保険料の確定額を算定し、前払いした概算額との差額を精算します。
●上記概算額の算定と前払い、確定額の算定と精算は、毎年6月に行うのが基本です。

計算方法は、雇用保険料と同じです。(違いは保険料率のみ)
●労災保険料は、雇用保険料と一緒に支払います。
※労災保険料は、ついての詳細は、「雇用保険料について」を参照ください。
まとめ

今回は、経理や事務職の初心者向けに、最低限抑えてほしい社会保険のポイントをかんたんに解説しました。
社会保険料についてのポイントは、
●健康保険(病気や怪我に備えた保険)
→ 会社と従業員が保険料負担
→ 基本、年1回保険料が改定される
→ 対象者は従業員全員(一部条件あり)
●介護保険(介護が必要になった時に備える保険)
→ 40歳以上の人が加入
→ 会社と従業員が保険料負担
→ 基本、年1回保険料が改定される
→ 対象者は従業員全員(一部条件あり)
●厚生年金保険(老後に備える年金)
→ 会社と従業員が保険料負担
→ 基本、年1回保険料が改定される
→ 対象者は従業員全員(一部条件あり)
●雇用保険(失業の時の保険)
→ 会社と従業員が保険料負担
→ 年に1度(6月)概算保険料を会社がまとめて前払い
→ 年に1度(6月)概算と確定の保険料の差額を精算する
→ 雇用保険と労災保険を合わせて、労働保険という
→ 対象者は従業員全員(一部条件あり)
→ 労災保険と合わせて「労働保険」といわれる
●労災保険(業務中の怪我などに備える保険)
→ 会社が保険料負担
→ 年に1度(6月)概算保険料を会社がまとめて前払い
→ 年に1度(6月)概算と確定の保険料の差額を精算する
→ 雇用保険と労災保険を合わせて、労働保険という
→ 対象者は、従業員全員
→ 雇用保険と合わせて「労働保険」といわれる
ということになります。
最低限、これを知っておけば、経理の仕事でも役に立ちます。
この社会保険の知識は、日々の経理処理、決算業務だけでなく、来期以降の予算策定の仕事でも使える知識です。
経理マンは、この社会保険の基礎知識を身につけて、仕事に生かしましょう。
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