税効果会計の注記 評価性引当額の変動理由を分析

会計・税務

2019年3月期より、税効果会計基準の変更が行われました。

基準変更の中で、有価証券報告書の注記に関するものもありました。

具体的には、

評価性引当額の表示については、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額、それぞれ区分して記載すること

評価性引当額に重要な変動が生じている場合、その変動の主な内容を記載すること

といった記載が求められています。

評価性引当額に重要な変動が発生した場合、

税負担率に大きな乖離が出てしまうので、その理由を記載しましょうというのが、基準改正の目的の1つだと思います。

(評価性引当額が大きく変動した場合、普通30%程度の税負担率が、50%になったり、10%になったりします)

今回、実際にどのような理由で、評価性引当額が変動しているのか、
各社の有価証券報告書をチェックしてみました。

評価性引当額の変動理由の事例

評価性引当額の変動理由としては、

● 繰越欠損金の増減

● 固定資産の減損

● 役員退職慰労引当金の計上

● 資産除去債務の計上

● 投資有価証券評価損の計上

● たな卸資産評価損の計上

● 将来課税所得の見込み額の減少

といった事例が見受けられます。

経理実務者としては、特に驚くような内容ではないですね。

例えば、
固定資産の減損は、金額が大きい場合が多く、さらに税務上は否認されます。

そして、優良企業でない限りは、この減損の一時差異すべてに対して繰延税金資産を計上することができません。

また、
投資有価証券の評価損についても、税務上は否認されます。

税務上はこの投資有価証券を売却するときに初めて、評価損を損金として計上することができますが、その売却がいつになるかわからない場合、この評価損の一時差異に対して繰延税金資産を計上することはできません。

いずれにせよ、評価性引当額の増減理由としては、
税務上否認され、比較的金額も大きくなるようなものですので、おおよそパターンが決まっています。

パターンが決まっているため、この評価性引当額の変動理由に関する注記は、

「やっぱりそうだよね」

といった確認程度の注記となります。

注意すべき評価性引当額の変動理由

評価性引当額の変動理由は、おおよそパターン化されていますが、

変動理由が、

「将来課税所得の見込み額の減少」

といった場合には、注意が必要かと思います。

将来の課税所得の見込み額が減少したということは、間接的に将来の税前利益が減少する見込みであるということとも読み取れます。

その会社は、将来の業績を悲観しているとも思われます。

そして監査法人が

● 将来の業績を悲観的に考えている
● 将来の業績が良くなるような証拠が入手できなかった

といったこともあると予想されます。

また、

● 会社側が、監査法人に将来の業績が良くなることを論理的に説明できなかった

といったこともあり、結果的に将来の課税所得の見込み額を減少せざるを得なかったということが想像されます。

会社側も監査法人側も、将来の業績を悲観しているがために、

「将来課税所得の見込み額の減少」

が起きていると思われますので、この点は会社の業績を見るうえで、注意が必要と思われます。

まとめ

有価証券報告書に記載される、税効果会計の注記で評価性引当額の変動理由は、
以下のように、おおよそパターン化されています。

● 繰越欠損金の増減

● 固定資産の減損

● 役員退職慰労引当金の計上

● 資産除去債務の計上

● 投資有価証券評価損の計上

● たな卸資産評価損の計上

● 将来課税所得の見込み額の減少

ただし、評価性引当額の増加が、

「将来課税所得の見込み額の減少」

といったものがある場合は、
「将来の所得が減少する=利益も減少する」
と見込んでいることが想像されますので、注意が必要と思われます。

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