2020年9月28日付の経営財務に、
「2019年4月期~2020年3月期の内部統制報告書 開示すべき重要な不備」
の状況について取り上げられていました。
毎期、内部統制報告書に開示すべき重要な不備を記載している会社が、数十社ありますが、その内容が非常に気になるところです。
開示すべき重要な不備がある会社
2019年4月期~2020年3月期において、開示すべき重要な不備がある会社は、38社とのことです。
その中でも、JASDAQが15社と突出して多い状況です。
経理人材も限られているマザーズが一番多いのではと思われますが、マザーズは5社程度で意外と少ないですね。
開示すべき重要な不備の内容
開示すべき重要な不備の内容ですが、
● 不適切な会計処理 15件
● 会計処理の誤り 11件
● 人材不足 8件
がトップ3を占めています。
不適切な会計処理の事例
一番多い、不適切な会計処理とはどんなものか確認しますと、
興味深い事案が出てきました。
● 社内手続きを経ずに資産購入をし、かつ資本的支出を経費処理して利益調整を実施
● 建設仮勘定の過大計上による費用の過少計上
● 回収不能な長期貸付金を広告宣伝費名目で支出した後、回収したと装う
● 固定資産の減損処理で、本社共通費の配賦方法を意図的に調整していた
不適切な会計処理のほとんどは、利益を調整を目的としているものが多いです。
ほとんどは、経理以外の部門が意図的に行っており、後から経理や監査法人が気づいて大騒ぎになるような事例かと思います。
特に気になるのは、固定資産の減損処理で、減損を発生させないように調整している事例です。
これは経理部門の人も、直接または間接的に関わっているように思います。
上からの指示があったのかもしれませんが、経理が不適切な会計処理に関わることについては、同じ経理に関わる者として要注意事例であると認識しておかなければいけません。
会計処理の誤り事例
会計処理の誤りについては、経理部門が関わる事例が多く見受けられます。
● 販売管理システムのプログラムミスによる、棚卸資産の計上ミス
● のれんの減損損失の計上漏れ
● 為替換算調整勘定の計上誤り
● 繰延税金資産の計上誤り
● キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲の誤り
システムのプログラムの問題に起因した、棚卸資産の計上ミスというのは、正直辛いところがありますね。
これこそ、経理はシステムにも詳しくないと、後々ひどい目に合うという事例です。
また、のれんの減損損失計上漏れについては、めったに発生しないため、経理担当者も失念していたと思われます。
こういう時ほど、監査法人が事前にアラーム出してもらいたいものですが・・・
そして、キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲の誤りですが、こんなの起こるのか!?と思ってしまいます。
しかし、経理の現場ではキャッシュ・フロー計算書を作成できるメンバーが少ないこともあって、キャッシュ・フロー計算書のミスが多いのが現状です。
キャッシュ・フロー計算書の誤りは、自社でも発生する可能性が高い事案ですので、要注意ですね。
人材不足の事例
経理、決算業務に必要な専門知識を有した人材が不足している、
このような事例は、毎年発生しています。
2019年4月期~2020年3月期においては、
● 開示書類作成のために必要な専門知識を有した社内の人材が不足
● 人員不足により、経理・決算業務の相互チェック・承認が不十分
といった、お決まりの記載が多くあります。
人材不足は、会計処理の誤りと合わせて、記載されることも多いようです。
会計処理の誤り ⇒ 人材不足のため
という、まあそうだろうと納得するような内容です。
人材不足については、やはりマザーズやJASDAQの企業が多いですね。
決算開示ができる人材を、すぐに確保するのは難しいかと思います。
経理含めた間接部門にお金をかけたくないのかもしれませんが、
人材確保できなければ、至急アウトソーシングを検討するなどの対応が必要ですね。
その他の事例
その他の、開示すべき重要な不備の事例としては、
● システム上の問題
● 開示の誤りや漏れ
● 決算の遅延
などがありました。
システム上の問題は、
上記の不適切な会計処理でも記載した、販売管理システムのプログラムミスや、基幹システムと会計システムの整合性の不備などがありました。
開示の漏れや決算の遅延は、結果的に人材不足にも繋がる案件ですね。
まとめ
内部統制報告書に記載されている、「開示すべき重要な不備」事例は、自社でも発生する可能性が高いものがあります。
定期的に他社の事例をチェックすると同時に、自社で同じことが起こらないよう事前に対応することが望まれます。
コメント